アラート対応が遅れる原因とは?対応を迅速に進めるための対策を解説

はじめに

アラート対応を迅速に行うには、事前に十分な準備を整えておくことが重要です。準備が不十分だと、実際のアラート対応の際に想定外の時間を要する可能性があります。アラート対応のような突発的な業務に時間を割くと、エンジニアの精神的負担になり、業務効率低下にも繋がりかねません。その結果、予定していたタスクが遅れ、プロジェクトの進行にも悪影響を及ぼします。

本記事では、アラート対応が遅れる原因を解説した後、迅速な対応を可能にするための事前準備やドキュメントの活用方法を詳しくご紹介します。最後に、「ベアサポート」のエンジニアが実践している具体的な工夫も解説します。本記事に記載されていることを実施することで、アラート対応の改善に向けたヒントを得ることが可能です。

アラート対応が遅れる主な原因

アラート対応が遅れる原因は複数の理由が存在するため、原因を明確化し対策を講じる必要があります。
以下に、アラート対応が遅れる原因について記載します。

対応の優先順位が適切ではない

どのアラートから対応するかあらかじめ優先順位づけをしないと、大量のアラートの発生時に重要なアラートが埋もれてしまい、対応遅れや見落としのリスクが高まります。監視対象が広範囲に設定されていることや、しきい値が厳しすぎることが原因です。

監視設定が最適化されていない

しきい値の設定やアラート条件の設計などの監視設定が不十分だと、アラートノイズが発生します。アラートノイズは、監視ツールから発信される大量のシステムアラートの中にある、無関係なアラートや優先度の低いアラート、フラッピングアラート、重複アラート、相関アラートなどの誤検出、誤報など対応不要なものです。これらを放置すると重要なアラートを見逃すリスクが高まります。

アラートの見落とし

アラートを見落としてしまうと、対応の着手が遅れるだけでなく、完了までに時間がかかります。システムは24時間365日稼働しており、異常がいつ発生するかわかりませんが、エンジニアが常にアラートメールを確認することは現実的ではありません。平日日中帯であったとしても、他業務を行なっていてアラートメールを見逃してしまうことがあります。

プレッシャーによる誤判断

アラート発生時にエンジニアは対応策を決定しますが、その判断が的確でない場合、障害の影響範囲が拡大し正常化までに要する時間が長引く恐れがあります。
迅速に対応しなければといった時間的制約や、結果に対する責任、対応が難しい状況下での経験がプレッシャーとなり、判断ミスを引き起します。

アラート対応を迅速に進めるための3つの準備

アラート対応を迅速に進めるためには、システムの運用を想定した事前準備が必要です。システム運用開始時に監視設定しか実施できていないと、先にあげた要因が生じ、アラート対応に時間を要します。最短で完了できるよう、監視設定時に以下の3つの事前準備をしてみてください。

アラート対応フローの整備

監視設計だけではなく、アラートに対して障害対応手順を事前に結びつけておくことが重要です。アラート対応フローを整備すれば、エンジニアは通知されてきたアラートに結びついている手順に迅速に着手できるため、対応の速度と精度が向上します。さらに、詳細な対応手順をドキュメント化し、エスカレーションルールなども記載することで、より迅速にアラート対応ができるようになります。

アラートレベルの定義

大量のアラート通知が届くため、どれから対応すべきか判断に迷うことがあります。そこで、システムに対する影響度に基づき、アラートに対してレベルを定義します。
アラートレベルを定義することで、高レベルのアラートから着手でき、低レベルのアラートは夜間休日の対応を見送るなど、アラート対応業務に対するエンジニアリソースの優先順位付けにも繋がります。
以下に、レベル付けの例を記載します。

  • レベル1:通知、情報共有のアラート
    リソース監視などによるCPU・メモリ・ディスク使用率に関する通知など
  • レベル2: サービスに影響でないが翌営業日には対処が必要なアラート
    アプリケーションログ監視などによるバッチ失敗など
  • レベル3: サービスに影響がある緊急対応が必要なアラート
    死活監視、外形監視などによるサーバー停止・外部からのURL接続エラーなど

メール以外のアラート通知手法

常にアラートを確認することは不可能なため、気づかせてくれるための仕組みを導入することが重要です。アラート通知はメールで届くように設定することが一般的ですが、緊急対応が必要なアラートをSlackなどのチャットツールにメンション(受信者を指定してメッセージ送信・投稿を行う機能)を付けたり、SMSで通知することもできます。また、あらかじめ通知条件を設定することで、光や音声を使ってアラートを通知してくれるパトランプもあります。

アラート対応を迅速に進めるための4つのドキュメント

ドキュメントを用意することにより、迅速に対応ができるだけでなく、複数人で行う作業を標準化でき、体制を強化し易くするメリットもあります。監視運用の現場でよく使用されるドキュメントを紹介します。

アラート(監視)定義書

アラート(監視)定義書は、サーバー毎にどのような監視が設定されているのか確認できるドキュメントです。その他にアラートが出るしきい値、エスカレーションタイミング、エスカレーション先を記載します。また、先に挙げたアラートレベルを記載しておくことで、重要度の高いアラートに気付きやすくなります。

アラート対応手順書

アラート対応手順書は、記載の手順通りに取り掛かることで、アラート毎の対応が標準化され、迅速に作業を進められるようになるドキュメントです。状況判断の方法や復旧手順、連絡タイミング、復旧確認の方法などを明確に記載することが重要です。

エスカレーション先一覧

エスカレーション先一覧には、障害発生時に適切な担当者へ迅速に連絡するためのドキュメントです。システム開発担当者やエンドユーザ、インフラを提供しているベンダーへの連絡先とともに優先順位を記載します。
監視定義書と連携して管理することで、アラート毎のエスカレーション先を定義することが可能になります。

システム構成図

システム構成図は、サーバーの役割やサーバー間の繋がり、システム全体の構造を把握するためのドキュメントです。構成図があることで、障害時に視覚的に影響範囲を確認できるため、問題の原因を追跡し、対応を早めることができます。また、他のメンバーがシステム構成を理解しやすくなり、情報共有時の負担も軽減されます。


構成図を作成する際は、フリー素材やインフラベンダーが提供しているアイコンを使用するのがお勧めです。

AWSのアイコン:AWS「AWS アーキテクチャアイコン」https://aws.amazon.com/jp/architecture/icons/(2025/2/21確認)

IDCFのアイコン:IDCFrontier「IDCF公式アイコン」https://www.idcf.jp/officialicons.html(2025/2/21確認)

さくらインターネットのアイコン:さくらのナレッジ「システム構成図やプレゼンテーション資料などで自由に使える「さくらのアイコンセット」を公開いたしました。」https://knowledge.sakura.ad.jp/4724/(2025/2/21確認)

アラート対応を迅速に進めるための2つの工夫

運用を想定した準備に加えて、使用するツールの設定を工夫することで、アラート対応を迅速に実施することができます。ベアサポートのエンジニアが実施している手法を紹介します。

アラートメールの件名から対象システムを特定できるようにする

アラートメールの件名に対象システムの情報を記載するよう設定すると、そのシステムの特定がしやすくなります。通知をメールで受け取る現場では、アラートの件名が似た文章になると、誤認する可能性があります。アラートメールの件名に以下の項目を含めることにより、本文を確認しなくても対象のシステムやサーバーを特定でき、影響範囲の把握がしやすくなります。

  • 管理番号
  • システム名
  • ホスト名
  • アラート種別
  • アラートレベル

監視ツールのアラート通知条件を変更する

アラートの通知条件を継続通知から状態変更通知に切り替えることで、不要なアラートを減らし、重要なアラートだけに集中して対応できるようになります。この設定では、異常状態と正常状態が切り替わったタイミングでのみ通知が送信されるため、従来のように異常状態中に繰り返しアラートが送られることはありません。Mackerel、Amazon CloudWatch、Zabbixなどの監視ツールでこの設定が利用可能です。

まとめ

アラート対応を迅速に進めるには、影響度に応じてレベル付けし、アラートごとに定義された対応を準備しておくことが重要です。アラートが大量に通知される環境では、「ノイズが多い」「見落としが発生する」「即時対応のプレッシャーが大きい」などの問題がつきものです。しかし、事前に準備をしておけば、これらの課題に冷静に対処し、アラート対応の完了を目指せます。準備の第一歩としては、アラート(監視)定義書、アラート対応手順書の作成から始めてみてください。

本記事で紹介したドキュメントや設定の作成は、時間と労力が必要です。作成や運用にお困りの方は、ぜひ「ベアサポート」にご相談ください。アラート対応に長けた専門チームが課題解決をサポートします。