AWSとAzureのどちらを選ぶ? 機能や料金、サポートを徹底比較
企業でIaaSを選定する際に、まず候補としてあげられるのはAWSとAzureではないでしょうか。IaaS市場は成長を続けていますが、2大勢力と言われるAWSとAzureが大きなシェアを占めています。本記事ではAWSとAzureそれぞれの特長や強みを解説し、料金体系やサポートなど重要なポイントから両者を比較します。AWSとAzure、どちらを選択すべきか迷っている方はぜひ参考にしてください。
この記事の目次
AWSとAzureの市場シェア
調査会社の米Gartnerが発表した2021年のIaaSクラウドの市場シェアでは、トップはAmazon Web Services(以下、AWS)で38.9%、2位がMicrosoft Azure(以下、Azure)で21.1%でした。前年からの成長率はAWSが35.0%、Azureが51.3%となっています。AWSのシェアが変わらず大きいものの、成長率はAzureの方が圧倒的に高く、今後さらに差を縮めていくことが予想されます。市場の成熟によってサービス力はすでに拮抗しており、それぞれの強みや特長を理解した上で自社に適したサービスを選択すべきだと言えるでしょう。
参考:Gartner「Gartner Says Worldwide IaaS Public Cloud Services Market Grew 41.4% in 2021」 (2022/11/21確認)
AWSの特長
AWSはAmazon Web Service社が提供するクラウドサービスです。2006年にサービス提供が開始されて以来、全世界で圧倒的なシェアを誇るパイオニア的な存在とされます。AWSは以下のような強みを持ちます。
安定した稼働実績
AWSはサービス開始から現在までの15年以上、安定したサービス提供を続けています。クラウドサービス開始当初は安全性や信頼性を懸念する声もありましたが、現在では払拭されつつあり普及が進んでいます。これはAWSの安定した実績が影響していると考えられるでしょう。
豊富なサービス展開
AWSはさまざまな分野に対応する新しいサービスや機能を次々と展開しています。これらの90%が顧客の要望をベースに開発されており、顧客中心のアプローチがされていることも特長です。ユーザは機械学習やIoTといった最先端の技術を、手軽にサービスとして利用することができます。また最小構成のスモールスタートからグローバルな大規模展開まで実現できる柔軟性や拡張性も魅力です。
コストダウンの推進
AWSはサービス開始から109回以上の値下げを実施しています。サービス提供規模の拡大によるスケールメリットを活かし、リソースの維持コストやサービス開発コストを最適化することで顧客への積極的な還元を実現しているのです。
Azureの特長
AzureはMicrosoft社が提供するクラウドサービスです。2010年にPaaSを中心にサービス提供が開始されました。2022年1〜3月期のMicrosoft社の決算ではAzureの売上が前年比46%と高成長を続けており、シェア1位のAWSを猛追しています。Azureは以下のような強みを持ちます。
参考:Microsoft「FY2022-Q3-Press Release & Webcast」 (2022/11/21確認)
Microsoft製品との親和性が高い
Microsoft OfficeやWindows Server、Active Directory、SQL ServerなどMicrosoftの提供する既存製品との親和性が高く、連携により利便性が向上することが大きな特長です。すでにMicrosoft製品を利用している環境なら移行作業のハードルも低く、さまざまなメリットを享受できます。オンプレミスで利用していたWindows ServerやSQL Serverのライセンスを持ち込むこともできるため、ライセンス費用の大幅な節約も可能です。
強靭なグローバルネットワーク
Azureを提供するMicrosoftは世界最大規模のグローバルネットワークを所有しており、全世界のユーザに迅速かつ安定したサービスを提供しています。Azureもこのネットワーク内でサービスを分散配置しているため、各サーバーやリージョンでの障害にも耐えうる可用性を備えています。
ハイブリッドクラウドの実現
Azureはクラウドプラットフォームでありながらオンプレミスサーバーとの親和性が高く、クラウドとオンプレミスを併用したハイブリッドクラウド環境を実現しやすいメリットがあります。独自のセキュリティ対策やカスタマイズのためにオンプレミスを併用したい企業から選ばれやすいです。
AWSとAzureの比較
クラウドサービスを選ぶ際に重要なポイントからAWSとAzureを比較します。
性能
Cockroach Labsによる主要クラウドサービスの処理性能を比較した年次レポートの「2021 Cloud Report」では、CPUパフォーマンスはほぼ互角、ネットワークスループット・レイテンシーはAWSのほうが良い結果であり、ストレージIOPSはAzureのほうが良い結果でした。それぞれ得意分野があるため、特定の分野の性能を重視する場合は確認しておくと良いでしょう。
参考:Cockroach Labs「2021 Cloud Report」 (2022/11/21確認)
機能・サービス
AWS、Azureともに仮想マシンやストレージ、開発サービスなどクラウド環境に必要なサービスは一通り揃っています。特長としてAWSはパブリッククラウドサービスの先駆者としてEC2を中心にサービスを開始したこともあり、使いやすさや性能に定評のあるEC2をはじめとしたIaaSに強みを持ちます。一方AzureはPaaSからサービスを開始した背景から、Azure App ServiceをはじめとするPaaSが充実していることが強みです。
料金体系
基本的にはAWS、Azureともに使用した分だけ請求される従量課金制です。
AWSは1年または3年単位で特定量を契約することで割引価格となるリザーブドインスタンスという料金体系があります。またボリュームディスカウントも受けることができ、例えばオブジェクトストレージサービスのAmazon S3などは価格が階層化されており、使用量が増えるほど割安な金額が適用されます。
Azureも同じく、1年または3年単位で特定量を予約することで割引されるシステムが用意されています。またAWSと比較して最大でWindows VMは71%、SQL Server VMは45%割安になるなど、Microsoft製品の価格には特に強みを持ちます。ほかにもリセラー経由でライセンスを購入する料金体系も用意されています。
サポート
サポートプランの比較は以下のとおりです。AWSは各プランにおいて設定されている定額の費用、もしくは使用料に応じた費用いずれか金額が高い方が適用される料金体系となっています。またAWSでは料金は高額になるものの、クリティカルな問題が発生した際により速く回答が得られるプランが充実しています。
【AWSのサポートプラン】
プラン | ベーシック | デベロッパー | ビジネス | エンタープライズ On-Ramp | エンタープライズ |
料金 | 無料 | 29 USD/月 or 使用料の 3% | 100 USD/月 or 使用料の3〜10% | 5,500 USD/月 or 使用料の 10% | 15,000 USD/月 or 使用料の3〜10% |
アクセス | セルフヘルプ リソース:ドキュメント、ホワイトペーパー、AWS re:Post、コミュニティサポート | 電話、Web、チャット | 電話、Web、チャット | 電話、Web、チャット | 電話、Web、チャット |
最短応答時間 | — | システム障害: 12 時間内 | 本番システムのダウン: 1 時間以内 | ビジネスクリティカルなシステムのダウン: 30 分以内 | ビジネス/ミッションクリティカルなシステムのダウン: 15 分以内 |
【Azureのサポートプラン】
プラン | ベーシック | デベロッパー | スタンダード | プロフェッショナル ダイレクト |
料金 | 無料 | 29 USD/月 | 100 USD/月 | 1,000 USD/月 |
アクセス | セルフヘルプ リソース:ビデオ、ドキュメント、コミュニティサポート | メール | メール、電話 | メール、電話 |
最短応答時間 | — | 事業に軽微な影響が及ぶ場合:8営業時間以内 | 事業に大きな影響が発生する場合: 1時間以内 | 事業に大きな影響が発生する場合: 1時間以内 |
まとめ
2大クラウドサービスとされるAWSとAzureのサービス力は拮抗しており、優劣はありません。自社に適した選択をするには、今回紹介したようなそれぞれの特長を理解して比較検討することが大切です。
インフラの運用支援を行うベアサポートは、AWS、Azureどちらの対応も可能です。クラウドサービスの選定や運用に不安や課題がある場合はぜひお気軽にお問い合わせください。