運用改善の必要性とは? システム運用のつらさを解消するための進め方とポイント
ビジネスを支えるITシステムの安定稼働のために運用は欠かせないものですが、複雑化するITシステムの運用現場には多くの課題があります。運用現場の抱える課題を解決し、効率化や価値のある運用を実現するにはどのように改善を行えば良いのでしょうか。本記事では、改善が必要とされるシステム運用の課題から、運用改善の具体的な進め方、意識すべきポイントなどについて解説します。
この記事の目次
運用改善の必要性
運用改善とは、システムの運用を改善する取り組みのことです。運用現場ではさまざまな課題を抱えていることが多く、トラブル対応などに追われるつらい運用を脱して安定的な運用を実現するには、問題点を解きほぐし改善していくことが必要です。まずは運用現場でよくある課題と、運用改善の目的について詳しく解説します。
システム運用のよくある課題
システムの運用現場では、以下のような課題を抱えていることが多いです。
属人化している
属人化とは、特定の技術者のスキルや知見に業務が依存してしまうことです。運用現場で属人化が進むと、トラブルが発生した際に特定の人しか対応できないケースが発生します。そういった場合は復旧が遅れ、事態が悪化する可能性があり、システムダウンによる業務停止などの大きなリスクが想定されます。
属人化してドキュメント化など業務の標準化がなされていないと、その特定の技術者にばかり業務が集中してしまい、高負荷な状態が続いてしまいます。標準化されていなければノウハウの引き継ぎも難しく、技術者の異動や退職が発生した場合には現場に大きな混乱を招くでしょう。
運用するシステムやツールの多様化によるスキル習得の難しさや、IT技術者の人材不足などから、属人化の課題は多く存在しています。
作業やトラブル対応に追われる
DX推進が急務とされ、あらゆる業務のデジタル化が進む中でITシステム環境は複雑化しています。煩雑な運用・管理やトラブル発生時の対応など、運用現場の高負荷な業務量が課題とされています。
高負荷な状況はオペレーションミスにもつながりかねませんが、改善案を検討する時間も捻出できないという場合も多いです。効率化や自動化をしようにも、そもそも業務全体が整理されておらず、どこから手をつけていいかわからないといった状況や、前向きな改善に取り組んだり新しい技術を習得するための学習をしたりする時間を割けないなどの課題があります。
評価がされづらい
システムを安定稼働させることは企業にとって大きな価値があります。しかし運用業務はきちんとサービスレベルを遵守していても、利用者からは安定稼働することが当たり前と考えられ、なかなか評価されにくいものです。反対に短時間でもシステムダウンすると心象的にマイナスになってしまうことも多いため、運用担当者はモチベーションを保つことが難しいでしょう。さらに費用対効果が見えにくいため、コスト削減を求められることもあります。
運用改善の目的
運用改善には前述の運用現場で抱える課題解決を含め、以下のような目的があります。
事業の継続
運用業務の本質は、企業のリソースや機能を活用して事業を継続させることです。災害や障害といった不測の事態でも、業務をストップさせないための安定したシステム運用や、顧客・社内ユーザが求めるサービスを提供する必要があります。運用改善は安定稼働を妨げる課題を排除し、事業継続力を強化するために行います。
生産性の向上
投入した資源(設備や労働力など)に対してどれだけ成果を生み出せるかという生産性は、企業の競争力に影響します。運用改善によって生産性のボトルネックとなっている課題を取り除き、業務効率化やサービスの稼働率アップを実現することも大きな目的です。
運用改善の進め方
効果的な運用改善の進め方について解説します。
1. 運用の可視化
まずは運用業務を可視化します。誰が、どのようなタイミングで、何を行っているのかをすべて洗い出しましょう。運用担当者が複数いる場合はそれぞれの担当範囲についても詳細に確認します。
定期的に行う定常業務と突発的に発生する非定常業務に分け、スケジュールや業務フローまで棚卸しを行います。これにより表面化していなかった運用チーム内での認識の違いや属人性が発見できるなど、課題の可視化にもつながります。
2. 運用の整理
次に棚卸しした運用業務の整理をします。それぞれの業務をなぜやるのか、本当に必要なのかを見直し、なるべく合理的に無駄を省いていきましょう。事業継続性や生産性向上といった本来の目的を意識しながら業務の優先順位を設定するのも効果的です。
各業務において最終的に目指すべき終点を確認し、チーム内で認識を合わせながら進めます。また実施する業務について、特定の人物だけでなく誰もがいつでも同じように作業して成果を出せるよう最適化する「業務の標準化」を目指しましょう。
3. 運用の自動化やアウトソース
必要な業務を整理したうえで、自動化やアウトソースの検討を行います。
運用の自動化とは、今まで手動で行っていた作業の一部またはすべてをツールで代替し、人が手を動かさなくても済む状況にすることです。自動化することで人為的なオペレーションミスやリソースの削減が期待でき、生産性や品質の向上に効果的です。ただし自動化実装のコストに見合った効果を得るには、どの作業をどこまで自動化するかの適切に判断しなければなりません。自動化に取り組む前に業務整理や標準化を行っておくことが重要です。
また運用業務を専門業者にアウトソースすることも有効な手段です。業務負荷の高い作業を多くの運用実績を持つ専門業者に任せることで、品質を維持しながら運用担当者の負担を減らせます。あいたリソースを自社のエンジニアがやるべき重要な業務に集中させることで、人的リソースの有効活用・生産性の向上につながります。
運用改善のポイント
運用改善を行ううえで意識すべきポイントについて解説します。
複雑化を防ぐ
新たなシステムの導入やIT環境の変化、ユーザ個別のサポート対応、「運用でカバー」というシステム開発からの皺寄せなど、放っておくと運用業務は煩雑になりがちです。複雑な運用作業は属人化しやすく、自動化することも難しいため、運用改善ではなるべく複雑さを排除するよう心がけます。可能な限り誰でも理解しやすいように業務を平易化し、必要なスキルセットやツールなどを明確にしていくことを心がけましょう。
ブラックボックス化を避ける
業務のブラックボックス化は、事業の継続性の観点から大きな課題だといえます。特に運用の定常作業などの業務が属人化し、ブラックボックス化している場合は早急に対処が必要です。業務を棚卸しし、属人化しているものを標準化していくことで、メンバーの異動や退職などによるリスクを軽減できます。誰がどのような作業をしているのか常に見える状態にすることで、業務の効果測定やメンバーの業務負荷の平準化などもしやすくなるでしょう。
常に価値を生む仕組みづくり
運用における価値とは、安定したシステム稼働を維持して事業を継続させることやユーザの課題を解決して生産性を向上させることにあります。運用改善では常にその価値を生み出せるよう、標準化や自動化に取り組み、特定のリソースのみに頼らない安定した仕組みづくりを意識することが大切です。
まとめ
複雑化が進むITシステムの運用現場における課題を解決するには、運用改善が効果的です。また、運用改善は事業継続や生産性向上といったビジネスにおける重要な価値を生み出すためにも欠かせません。改めて自社の運用業務や課題を見直し、自動化やアウトソースなども検討しながら運用改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。
「ベアサポート」では、監視運用の代行だけではなく、インフラの初期構築や監視設計・導入、セキュリティソリューションの導入・運用など、インフラ運用に関することは何でも相談可能です。ITインフラに関する課題をお持ちであれば、ぜひお気軽にご相談ください。